省エネルギー措置の概要 |
■概要 |
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エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネルギー法)が改正され、建築主は建築物の省エネルギー措置に関する届出を義務づけられることになり、この法改正に関連して省エネルギー基準も改正されることになりました。
その主要な改正点の一つは、住宅を除く床面積が300㎡以上の全用途の建物に対して、新築・増改築時に省エネルギー措置(省エネルギー計画書)の所管行政庁への届出が義務づけられたことです。また建築物の省エネルギー性を評価し、省エネルギー基準に係わる適否を判定する評価方法も策定されました(通称「ポイント法」と言われ、床面積が5,000㎡以下の建物に対してのみ適用が出来ます)。
このように、省エネルギー基準は、「年間熱負荷係数(PAL:Perimeter
Annual Load factor)」と「設備システムエネルギー消費係数(CEC:Coefficient
of Energy Consumption)」を用いた「性能型の基準」か、建物や設備の使用を判断の根拠とした「仕様型の基準」のどちらか一方を選択することとなります
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建築物(非住宅)の省エネルギー基準の構成
項目
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性能型の基準による判断方法
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仕様型の基準による判断方法
(ポイント法)
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1.
外壁・窓等を通しての熱損失の防止
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全ての規模に適用できる
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PAL≦判断基準値
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延べ床面積が5,000㎡以下の建物に適用できる。
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ポイント≧100
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2.
空気調和設備に係わるエネルギーの効率機利用
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CEC/AC≦判断基準値
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ポイント≧100
※1
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3.
機械換気設備に係わるエネルギーの効率的利用
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CEC/V≦判断基準値
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ポイント≧100
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4.
照明設備に係わるエネルギーの効率的利用
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CEC/L≦判断基準値
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ポイント≧100
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5.
給湯設備に係わるエネルギーの効率的利用
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CEC/HW≦判断基準値
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ポイント≧100
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6.
昇降機に係わるエネルギーの効率的利用
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CEC/EV≦判断基準値
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ポイント≧100
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※1 分散型システム(パッケージ方式)のみ適用可
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性能型の基準における判断基準値は、建物のエネルギーの使用状況に応じて分類された用途ごとに定められており、この用途は、「住宅」、「ホテル等」、「病院等」、「物品販売業を営む店舗等」、「事務等」、「学校等」、「飲食店等」、「集会所等」、「工場等」の8種類に区分されています。 |
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建物の用途区分の具体例
ホテル等
ホテル、旅館その他エネルギーの使用状況に関してこれらに類するもの。
病院等
病院、老人ホーム、身体障害者福祉ホームその他エネルギーの使用状況に関してこれらに類するもの。
物品販売業を営む店舗等
百貨店、マーケットその他エネルギーの使用状況に関してこれらに類するもの。
事務所等
事務所、税務署、警察署、消防署、地方公共団体の支庁、図書館、博物館、郵便局その他エネルギーの使用状況に関してこれらに類するもの。
学校等
小学区御、中学校、高等学校、大学、高等専門学校、専修学校その他エネルギーの使用状況に関してこれらに類するもの。
飲食店等
飲食店、食堂、喫茶店、キャバレーその他エネルギーの使用状況に関してこれらに類するもの。
集会場等
公会堂、集会場、ボーリング場、体育館、劇場、映画館、パチンコ屋その他エネルギーの使用状況に関してこれらに類するもの。
工場等
工場、畜舎、自動車車庫、自動車駐車場、倉庫、観覧場、卸売市場、火葬場その他エネルギーの
使用状況に関してこれらに類するもの。
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■性能規定による省エネルギー基準 |
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①年間熱負荷係数(PAL)
建築物の外壁、窓等を通しての熱の損失の防止に関する指標です。
PAL
=
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ペリメータゾーンの年間負荷
(MJ/年)
ペリメータゾーンの床面積(㎡)
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ここでいうペリメータゾーンとは、外壁、窓等を通して外界の気象条件の影響を受ける建築物の内部空間のことで、地下階を除く各階の外壁中心線から水平距離5m以内の屋内の空間と屋根の真下の階の屋内空間および外気に接する床の直上の屋内空間をいいます。
また、年間熱負荷とは、建物用途毎に建物使用(空調)時間の標準スケジュールを設定し、この間に生じる暖房不可と冷房負荷を年間積算したもの。したがって、空気調和設備の現実の運転スケジュールとは関係なく、上記の設定時間にペリメータゾーンに生じる負荷を計算することになります。この時に考慮する熱としては、外壁、窓等からの貫流熱、日射熱、ペリメータゾーンの内部発生熱及び取入れ外気と屋内空間との温度差により取得する熱の4つです。
この年間熱負荷係数(PAL)の値が、建物用途別に設定された判断基準値にその建物規模によって得られる補正値を掛けて求めた値以下になるように、外壁、窓等の断熱化、日射の遮へい等を工夫することが求められています。
②空調エネルギー消費係数(CEC/AC)
建物の空気調和設備に係わるエネルギーの効率的な利用を評価するための指標です。
CEC/AC
=
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年間空調消費エネルギー量 (MJ/年)
年間仮想空調負荷
(MJ/年)
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年間空調消費エネルギー量とは、空気調和設備が1年間に消費するエネルギー量のことで、空気調和設備の定格入力値に全負荷相当運転時間を掛けて求めた値のことをいいます。ここでいう全負荷相当運転時間は、対象設備がある固定条件のもとで、年間に定格運転時の入力で何時間運転されるかを示す値です。この値は、対象とする設備機器の用途や建築物の所在地等により異なり、さらにその設備機器に対して省エネルギー手法を採用することにより変化します。
年間仮想空調負荷とは、建物用途やその所在地別に設定された固定条件のもとで、空調負荷を仮想計算したものを年間積算したものです。
したがって、この値が小さいほど、その空気調和設備のエネルギー利用効率は良いことになります。
③換気エネルギー消費係数(CEC/V)
建物の空気調和設備以外の機械換気設備に係わるエネルギーの効率的な利用を評価するための指標です。
CEC/V
=
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年間換気消費エネルギー量
(MJ/年)
年間仮想換気消費エネルギー量
(MJ/年)
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年間換気消費エネルギー量とは、換気設備の動力に、各設備の運転時間と省エネルギー制御をおこなう場合はこの効果に応じた係数を掛けて求めた値をいいます。
また、年間仮想換気消費エネルギー量とは、設計換気風量を処理するために必要な標準的な年間消費エネルギー量のことで、建物全体の換気量に対して、全圧損失、送風機効率、伝達装置効率、余裕率をほぼ標準的な値に設定した場合の送風機軸動力要領を計算し、それに年間運転時間を掛けて求めた値をいいます。
従って、この値が小さいほど、その機械換気設備のエネルギーが効率的に利用されていることになります。
④照明エネルギー消費係数(CEC/L)
建築物に設置される照明設備に係わるエネルギーの効率的な利用を評価するための指標です。
CEC/L
=
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年間照明消費エネルギー量
(MJ/年)
年間仮想照明消費エネルギー量
(MJ/年)
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年間照明消費エネルギー量とは、照明設備システムが1年間で実際に消費すると予想されるエネルギー量のことをいいます。
仮想照明消費エネルギー量とは、一定レベルの照明環境を確保するために現在の社会情勢や技術水準からみて最低限必要と想定される標準的な照明消費エネルギー量のことをいいます。
従って、この値が小さいほど照明設備に係わるエネルギーが効率的に利用されていることになり、計画される照明設備のエネルギー量の妥当性を評価することになります。
⑤給湯エネルギー消費係数(CEC/HW)
建築物に設置される給湯設備に係わるエネルギーの効率的な利用を評価するための指標です。
CEC/HW
=
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年間給湯消費エネルギー量
(MJ/年)
年間仮想給湯負荷
(MJ/年)
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年間給湯消費エネルギー量とは、各種用途で必要となる温度・量の湯を実際の給湯システムで供給する場合に必要となる熱量を年間積算した値をいいます。ここでは、後述する仮想給湯負荷と同様の考えで求められる給湯負荷に、給湯配管や貯湯槽等からの損失熱損及び循環パイプ等の運転動力のエネルギー量を加算することによって求めます。
仮想給湯負荷とは、必要となる温度・量の湯を当該建物に供給される水から熱損失なしで製造するのに必要となる熱量を年間積算した値をいいます。
なお、この給湯エネルギー消費係数と比較すべき指標値は、総配管長ΣL(m)を年間仮想使用湯量の日平均値VHD(㎥/日)で割った値であるIx値に基づき求められる。従って、同じようとの建物であってもIx値が異なる場合、CEC/HWの指標値が異なることになります。これは、建物規模が同一でも、敷地その他の関係で総配管長が長くならざるを得ない場合には、その長さに対して適切なCEC/HWの指標値が合理的に与えられるようになっています。
⑥エレベーター消費エネルギー係数(CEC/EV)
建築物に設置されるエレベーター設備に係わるエネルギーの効率的な利用を評価するための指標です。
CEC/EV
=
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エレベーター消費エネルギー量
(MJ/年)
仮想エレベーター消費エネルギー量
(MJ/年)
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エレベーター消費エネルギー量とは、計画されているエレベーターが1年間に消費するエネルギー量のことをいい、計画されているエレベーターの仕様(台数、速度、定員等)で、計画されている速度制御方式における消費エネルギー量を求めます。
仮想エレベーター消費エネルギー量は、計画されているエレベーターが現時点で基本的と考えられる速度制御方式で運転した場合の消費エネルギー量のことをいいます。
この両者を比較することにより、省エネルギー的なエレベーター設備となっているかを判断するようになっています。ただし、この係数(CEC/EV)による評価は、交通計画の手法、標準的なサービス水準、消費エネルギー量の計算方法などが明確になっている事務所及びホテル・旅館のみに限定されています。
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お問い合わせはこちら お電話:06-6447-7274
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■建築主の判断基準 |
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性能規定による性能指標(PALとCEC)の判断基準値
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ホテル等
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病院等
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物販店舗等
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事務所等
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学校等
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飲食店等
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集会所等
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工場等
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PAL
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420
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340
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380
|
300
|
320
|
550
|
550
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―
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CEC/AC
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2.5
|
2.5
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1.7
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1.5
|
1.5
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2.2
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2.2
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―
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CEC/V
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1.0
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1.0
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0.9
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1.0
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0.8
|
1.5
|
1.0
|
―
|
CEC/L
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1.0
|
1.0
|
1.0
|
1.0
|
1.0
|
1.0
|
1.0
|
1.0
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CEC/HW
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0<Ix≦7の場合
1.5
7<Ix≦12の場合
1.6
12<Ix≦17の場合 1.7
17<Ix≦22の場合 1.8
22<Ixの場合
1.9
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CEC/EV
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1.0
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―
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―
|
1.0
|
―
|
―
|
―
|
―
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Ix:給湯に係る総配管長ΣL(m)を年間仮想使用湯量の日平均値VHD(㎥/日)で割った値。
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■仕様規定による省エネルギー基準 |
建物設備の使用を判断の根拠とした「仕様型の基準」(通称“ポイント法”)の概要を説明します。なおこの「仕様型の基準」は、床面積が5,000㎡以下の建物に対してのみ適用が出来ます。 |
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①外壁・窓等を通しての熱損失の防止
以下に示す4つの省エネルギー項目を対象として、各々の評価項目における点数を合計し、更に地域及び用途による違いを補正する用途補正点を加算して得点を集計します。この得点が高い方が省エネルギー性が高く、各用途共通で評価点100点以上となることが適否基準となります。
・建築物の配置経過及び平面計画に関する評価点
・外壁及び屋根の断熱性能に関する評価点
・窓の断熱性能に関する評価点
・窓の日射遮へい性能に関する評価点
②空気調和設備に係わるエネルギーの効率利用
床面積が5,000㎡以下の建築物で、空調設備が空冷式パッケージエアコン又はガスヒートポンプエアコン(ビルマルチ方式を含む)の場合に仕様型の基準(ポイント法)による判断が出来ます。
それ以外の方式の場合は、5,000㎡以下の建築物であっても仕様基準による判断はできません。
評価項目は以下に示す3項目で、前項と同様に各評価点を合計し、評価点100点以上となることが適否基準となります。
・外気負荷の軽減(全熱交換器、余熱時外気シャットオフ)
・配管長さ(冷媒管長)
・熱源機器(室外機)の効率
③機械換気設備に係わるエネルギーの効率利用
以下に示す3つに記載された措置がなされている場合は、措置の状況により点数が与えられ、その合計点に80を加えた数値が評価点100点以上となることが適否基準となります。
・制御方法
・高効率低圧三相かご形誘導電動機を採用している場合
・給気機及び排気機による換気
④照明設備に係わるエネルギーの効率的利用
以下に示す3つの項目について、その措置の状況により点数が与えられ、その合計点に80を加えた数値が評価点100以上となることが適否基準となります。なお、ポイント法の評価は、「照明区間」ごとになされますが、多くの場合は複数の照明区間が評価の対象となります。このような場合は、それぞれの照明区間について評価点をそれぞれの床面積で加重平均し、その平均値を総合評価点とします。それに80店を加えて、その数値が100を超えるか否かで判定をします。
・照明器具の照明効率に関する評価点
・照明設備の制御方法に関する評価点
・照明設備の配置、照度の設定並びに室等の経常及び内装仕上げの選定に関する評価点
⑤給湯設備に係わるエネルギーの効率的利用
以下の示す5つの項目について、その措置の状況により点数が与えられ、その合計点に70を加えた数値が評価点100点以上になることが適否基準となります。
・配管設備計画(循環配管の保温、循環配管に係わるバルブ及びフランジの保温、一次配管の保温、一次配管に係わるバルブ及びフランジの保温、循環配管の経路及び管径、先止り配管の経路及び管径、一次配管の経路)に関する評価
・給湯設備(循環ポンプ、共用部の洗面所給水栓、シャワー)の制御方法に関する評価
・熱源機器の効率に関する評価
・太陽熱の利用に関する評価
・給水を予熱した場合の評価
⑥昇降機に係わるエネルギーの効率的利用
以下に示す2つの項目について、その措置の状況により点数が与えられ、その合計点に80を加えた数値が評価点100点以上になることが適否基準となります。
・エレベーターの制御方法に関する評価点
・エレベーターの設置台数に関する評価点 |
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